読書日記

夏休み企画〈書評でGo on a Trip!〉アジア編

  • 2020/08/18
世界各地を〈書評〉で巡る〈書評でGo on a Trip!〉企画、続いてはアジア編です!

アジアにGo!

【モンゴル】
楊 海英,新間 聡『文庫 モンゴル最後の王女: 文化大革命を生き抜いたチンギス・ハーンの末裔』(草思社)

前書き:楊 海英

本書は、一人のモンゴル人女性の生き方から、中国の民族問題の背景と本質を描こうとしたものである。文化大革命期に特化しているが、文革期ほど社会主義中国を代表する時代はほかにない。(この書評を読む)

文庫 モンゴル最後の王女: 文化大革命を生き抜いたチンギス・ハーンの末裔 / 楊 海英,新間 聡
文庫 モンゴル最後の王女: 文化大革命を生き抜いたチンギス・ハーンの末裔
  • 著者:楊 海英,新間 聡
  • 出版社:草思社
  • 装丁:文庫(326ページ)
  • 発売日:2019-12-05
  • ISBN-10:4794224281
  • ISBN-13:978-4794224286
内容紹介:
1927年、内モンゴル・オルドスにチンギス・ハーンの血を受け継ぐ最後の王女スチンカンルが生まれた。17歳の冬、父の従者だったボロルディと結婚し、一人息子に恵まれて穏やかに暮らしていた… もっと読む
1927年、内モンゴル・オルドスにチンギス・ハーンの血を受け継ぐ
最後の王女スチンカンルが生まれた。
17歳の冬、父の従者だったボロルディと結婚し、一人息子に恵まれて
穏やかに暮らしていたが、中華人民共和国建国後、その人生に暗雲が立ち込める。
スチンカンルは反革命分子のレッテルを貼られ、使役に駆り出され、
祖先を祀る聖地を開墾する屈辱に甘んじなければならなかった。
そして、あの文化大革命が始まる――。

著者の楊海英氏自身も内モンゴル・オルドスの出身。
中国で現在もなお続く苛烈な民族問題の知られざる実態を、激動を生き抜いた
女性の半生を通じて描きあげた迫真のドキュメンタリー。
『チンギス・ハーンの末裔』改題


はじめに 写真が語る歴史

第一章 黄金家族のたそがれ
 チンギス・ハーンの末裔
 名門西公シャンの没落
 共産党のアヘンと小銃
 従者と結婚した王女

第二章 草原の夜明けの星
 草原の人民政府
「積極分子」の婦女主任
 生産互助組の誕生
 人民のための活躍
「共産党のためなんだ」

第三章 草原に上った赤い太陽
 階級ごとに二分された合作社
 牧主階級を批判せよ
 モンゴル人の「独立王国」
 右派をつまみ出せ
 中国に貢献したモンゴル人の頭飾り

第四章 モンゴル高原にのしかかる中国の黒雲
 生態を無視した深耕作業
 王侯貴族を打倒せよ
 病んだ母に会えぬ「黒五類」
 拝火祭の夜の葛藤
 豚小屋で寝られた喜び

第五章 中国人の「牛鬼邪神」
 開墾された祖先の墓域
 屍肉の誘惑
 教育権を奪われたモンゴル人
 悲嘆の故郷
 中国に奪われた財産

第六章 吹きすさぶ文革の嵐
 政治的厄災の予感
 フランス製の柱時計と頭飾り
 殺気だつ批判闘争集会
 造反派の暴力
「反省する」モンゴル人

第七章 名誉回復への道
 ロバに乗せられた「女妖怪」
 中国人からの復讐
 文革時の生と死
 林彪事件のおかげ
「だれをも恨まない」

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【モンゴル】
陳 舜臣『耶律楚材 草原の夢』(集英社)

評者:山折 哲雄

その遊牧民族の凶暴なエネルギーの膨張をどのようにして食いとめ、秩序ある国家の鋳型に融けこましていくのか、――この困難な政治課題に応えるべく中国大陸の側から彗星のごとく登場してきた人物が、本書の主人公・耶律楚材(やりつそざい)である。 (この書評を読む)

耶律楚材 上 草原の夢 / 陳 舜臣
耶律楚材 上 草原の夢
  • 著者:陳 舜臣
  • 出版社:集英社
  • 装丁:文庫(336ページ)
  • 発売日:1997-05-20
  • ISBN-10:4087486109
  • ISBN-13:978-4087486100
内容紹介:
強大な軍事力でユーラシア大陸を席捲した武闘集団モンゴル。その宰相としてチンギス・ハンに仕え、政治的天才を発揮した男・耶律楚材の波瀾にみちた生涯を描く巨編。(解説・稲畑耕一郎)

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【中国】
落合 淳思『殷 - 中国史最古の王朝』(中央公論新社)

評者:出口 治明

殷については、酒池肉林に耽り国を滅ぼした暴君紂王の逸話がよく知られているが、これは、殷滅亡後1000年以上を経過した後世の文献資料(『史記』など)に依る創作である。甲骨文字を分析すると、紂王(帝辛が本名)は、むしろ有能な君主であって集権化を進めたため反乱を招いた様子が窺える。(この書評を読む)

殷 - 中国史最古の王朝 / 落合 淳思
殷 - 中国史最古の王朝
  • 著者:落合 淳思
  • 出版社:中央公論新社
  • 装丁:新書(256ページ)
  • 発売日:2015-01-23
  • ISBN-10:412102303X
  • ISBN-13:978-4121023032
内容紹介:
殷王朝は、今から三〇〇〇年以上も前に中国に実在した王朝である。酒池肉林に耽る紂王の伝説など、多くの逸話が残されているが、これらは『史記』をはじめとする後世の史書の創作である。いま… もっと読む
殷王朝は、今から三〇〇〇年以上も前に中国に実在した王朝である。酒池肉林に耽る紂王の伝説など、多くの逸話が残されているが、これらは『史記』をはじめとする後世の史書の創作である。いまだ謎き殷王朝の実像を知るには、同時代資料である甲骨文字を読み解かねばならない。本書は、膨大な数にのぼる甲骨文字から、殷王朝の軍事や祭祀、王の系譜、支配体制と統治の手法などを再現し、解明したものである。

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【中国】
閻連科『黒い豚の毛、白い豚の毛: 自選短篇集』(河出書房新社)

評者:張 競

閻連科において、文学の言葉は羽毛のように軽く散ってしまった命のための鎮魂歌であり、仲間たちを過去の海に残してきたことに対する後ろめたさが織りなす懺悔の音符である。(この書評を読む)

黒い豚の毛、白い豚の毛: 自選短篇集 / 閻連科
黒い豚の毛、白い豚の毛: 自選短篇集
  • 著者:閻連科
  • 翻訳:谷川 毅
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(272ページ)
  • 発売日:2019-07-25
  • ISBN-10:4309207731
  • ISBN-13:978-4309207735
内容紹介:
破格の想像力で信じがたい現実を描き、ノーベル賞有力候補と目される作家の、叙情とユーモア溢れる9つの物語。著者自選短篇集。

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【中国】
井波 律子『中国文章家列伝』(岩波書店)

評者:張 競

漢から清にいたるまで、詩人、小説家や戯曲家など十人の生涯を描く。去勢の刑罰を受けた司馬遷、纏足の靴で酒を飲み交わす楊維楨、赤貧のなかで『儒林外史』を書き上げた呉敬梓。個性豊かというより、強烈な性格の持ち主ばかりである。 (この書評を読む)

中国文章家列伝 / 井波 律子
中国文章家列伝
  • 著者:井波 律子
  • 出版社:岩波書店
  • 装丁:新書(243ページ)
  • 発売日:2000-03-17
  • ISBN-10:4004306620
  • ISBN-13:978-4004306627
内容紹介:
あるいは史書を著しあるいは詩文を作り、また画筆をとり、書に遊ぶ人びと-前漢の司馬遷から清代の鄭板橋・呉敬梓に至る雄大な中国文学の流れの中から十人の文章家を選び出して、その人と作品を縦横に語る。時の権力に対峙する者、背を向ける者、自立を目指す者、十様の生の軌跡が確かな輪郭で歴史の中に浮かび上がる。

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【中国】
藤井 省三『村上春樹のなかの中国』(朝日新聞社)

評者:張 競

ところが、村上春樹にはそのような威圧感はない。海外の読者にとって彼はあたかも身近な知人のようだ。彼ならきっと自分のたわいない独り言や不平を静かに聞いてくれるだろう、とそんなふうに感じている。だから、日本文学が警戒されていた韓国でも村上春樹がヒットし、反日デモが起きた頃も中国では村上春樹の作品が相変わらず人気だった。(この書評を読む)

村上春樹のなかの中国  / 藤井 省三
村上春樹のなかの中国
  • 著者:藤井 省三
  • 出版社:朝日新聞社
  • 装丁:単行本(280ページ)
  • 発売日:2007-07-10
  • ISBN-10:402259926X
  • ISBN-13:978-4022599261
内容紹介:
村上春樹は中国から深い影響を受けている。「中国行きのスロウ・ボート」『ねじまき鳥クロニクル』『アフターダーク』など作品中で中国を「記号」として登場させている。一方、中国語圏では台… もっと読む
村上春樹は中国から深い影響を受けている。「中国行きのスロウ・ボート」『ねじまき鳥クロニクル』『アフターダーク』など作品中で中国を「記号」として登場させている。一方、中国語圏では台湾、香港、上海、北京と、時計回りに村上春樹現象が出現した。「すっごくムラカミ(非常村上)」という流行語が生まれ、村上作品から影響を受けた「村上チルドレン」が多く輩出され、東アジアに与えた文化的な影響は大きい。近代文学において大きなテーマであった「中国」を村上春樹はどのように描いているのだろうか。また村上受容から見えてくる東アジアの姿とはいかなるものだろうか。魯迅からウォン・カーウァイまで「村上春樹」を軸に中国文学研究者が、東アジアの文化と社会を探る。

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【中国】
松本 紘宇『中国コメ紀行 すしの故郷と稲の道』(現代書館)

評者:平松 洋子

なれずしは飯をじっくり乳酸発酵させる魚の保存法で、紀元二、三世紀、中国南方の漢民族に伝わったという。こくのある酸味とうまみに魅せられ、その歴史を自分の舌でたしかめるために奥地へ分け入ってゆくのだ。(この書評を読む)

中国コメ紀行  すしの故郷と稲の道 / 松本 紘宇
中国コメ紀行 すしの故郷と稲の道
  • 著者:松本 紘宇
  • 出版社:現代書館
  • 装丁:単行本(232ページ)
  • 発売日:2009-05-26
  • ISBN-10:4768469949
  • ISBN-13:978-4768469941
内容紹介:
すしと稲のルートを探し歩いた悪戦苦闘のひとり旅。ニューヨークで最初のすし専門店「竹寿司」の開業者が、すしと稲のふるさとを訪ねて従来の学説を検証する。

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【中国】
廉 薇,辺 慧,蘇 向輝,曹 鵬程『アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム』(みすず書房)

解説:西村 友作

芝麻信用のスコアは、アリペイや余額宝、花唄といったアントフィナンシャルが提供する金融サービス利用することで点数が高くなる仕組みになっており、信用スコアが一定基準を超えると、様々な信用サービス(特典)を受けることができる。例えば、借家やホテル、レンタカー、シェア自転車などのデポジットが不要になったり、消費者金融でお金が借りやすくなったりする。(この書評を読む)

アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム / 廉 薇,辺 慧,蘇 向輝,曹 鵬程
アントフィナンシャル――1匹のアリがつくる新金融エコシステム
  • 著者:廉 薇,辺 慧,蘇 向輝,曹 鵬程
  • 翻訳:永井 麻生子
  • 出版社:みすず書房
  • 装丁:単行本(400ページ)
  • 発売日:2019-01-25
  • ISBN-10:4622087758
  • ISBN-13:978-4622087755
内容紹介:
アリペイで中国のキャッシュレス化を牽引する世界的フィンテック企業の全貌を解明。金融の最前線を知り、中国の今を知るための必読書

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【北朝鮮】
太 永浩『三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録』(文藝春秋)

評者:橋爪 大三郎

北朝鮮という国の内情をつぶさに知るほど、この国が他国と異なる社会秩序に支配されているとわかる。核心階層/基本階層/動揺階層/敵対階層、の区別がある。(この書評を読む)

三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録 / 太 永浩
三階書記室の暗号 北朝鮮外交秘録
  • 著者:太 永浩
  • 翻訳:李 柳真,黒河 星子,鐸木 昌之
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:単行本(492ページ)
  • 発売日:2019-06-13
  • ISBN-10:4163910387
  • ISBN-13:978-4163910383
内容紹介:
イスラエルとの極秘交渉。日朝平壌宣言の内幕。金正恩が粛清を続ける意外な理由。北朝鮮外交を裏の裏まで熟知する著者が全てを書く。

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【北朝鮮】
村上 龍『半島を出よ』(幻冬舎)

評者:豊崎 由美

この小説の行間からは、「もっと想像力を!」という作者の声が聞こえてきます。自分ではない誰か、自分とは違う立場、自分の知らない世界、まだ見ぬ明日、マイノリティの境遇、想像するだけで気持ちが萎えたりイヤな気分になったりするようなこと。そういったものに思いを飛ばす力こそが、今の日本人にもっとも欠けているのではないか。そんなことを深く考えさせられる小説なのです。(この書評を読む)

半島を出よ〈上〉 / 村上 龍
半島を出よ〈上〉
  • 著者:村上 龍
  • 出版社:幻冬舎
  • 装丁:文庫(509ページ)
  • 発売日:2007-08-01
  • ISBN-10:4344410009
  • ISBN-13:978-4344410008
内容紹介:
二〇一一年春、九人の北朝鮮の武装コマンドが、開幕ゲーム中の福岡ドームを占拠した。さらに二時間後に、約五百名の特殊部隊が来襲し、市中心部を制圧。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。慌てる日本政府を尻目に、福岡に潜伏する若者たちが動き出す。国際的孤立を深める日本に起こった奇蹟!話題をさらったベストセラー、ついに文庫化。

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【韓国】
ハン・ガン『少年が来る』(クオン)

評者:蜂飼 耳

抑圧された声や理不尽に抹殺された声に重なり、言葉による新たな視点の構築を試みる方向も、小説という言語表現に備わる性格と機能だ。ハン・ガンは、まだ子供だった頃に身のうちに打ちこまれた出来事と向き合い、小説という方法と一体となり、書き進めた。ここには書き手としての誠実さがあると思う。(この書評を読む)

少年が来る / ハン・ガン
少年が来る
  • 著者:ハン・ガン
  • 翻訳:井手 俊作
  • 出版社:クオン
  • 装丁:単行本(273ページ)
  • 発売日:2016-10-27
  • ISBN-10:490485540X
  • ISBN-13:978-4904855409
内容紹介:
1980 年5月18 日、韓国全羅南道の光州を中心として起きた民主化抗争、光州事件。戒厳軍の武力鎮圧によって5月27日に終息するまでに、夥しい数の活動家や学生や市民が犠牲になった。抗争で命を… もっと読む
1980 年5月18 日、韓国全羅南道の光州を中心として起きた民主化抗争、光州事件。戒厳軍の武力鎮圧によって5月27日に終息するまでに、夥しい数の活動家や学生や市民が犠牲になった。抗争で命を落とした者がその時何を想い、生存者や家族は事件後どんな生を余儀なくされたのか。その一人一人の生を深く見つめ描き出すことで、「韓国の地方で起きた過去の話」ではなく、時間や地域を越えた鎮魂の物語となっている。

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【韓国】
パク・ミンギュ『短篇集ダブル サイドA』(筑摩書房)

評者:都甲 幸治

本書には、SFやファンタジーなどを含む多様な短篇が収録されている。その全ての作品において、登場人物たちは精一杯苦闘し、死んでいく。そして読者は彼らと共に生きる意味を探す。韓国文学の最良の成果がここにある。(この書評を読む)

短篇集ダブル サイドA / パク・ミンギュ
短篇集ダブル サイドA
  • 著者:パク・ミンギュ
  • 翻訳:斎藤 真理子
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(300ページ)
  • 発売日:2019-11-29
  • ISBN-10:4480832122
  • ISBN-13:978-4480832122
内容紹介:
韓国人気実力派作家の短篇集。奇想天外なSF,現実的で抒情的な作品など全9篇。李孝石文学賞作品収録。二巻のどこからでもどうぞ。

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【韓国】
チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)

評者:鴻巣 友季子

「俺も旦那の稼ぎでコーヒー飲んでぶらぶらしたいよなあ……ママ虫もいいご身分だよな」と。「ママ虫」というと可愛い響きがあるが、元々はネットスラングで、「害虫」のようなかなり侮辱的な含意をもつ。(この書評を読む)

82年生まれ、キム・ジヨン / チョ・ナムジュ
82年生まれ、キム・ジヨン
  • 著者:チョ・ナムジュ
  • 翻訳:斎藤真理子
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(192ページ)
  • 発売日:2018-12-07
  • ISBN-10:4480832114
  • ISBN-13:978-4480832115
内容紹介:
韓国で100万部のベストセラー! 邦訳刊行。映画化決定! 女性が出会う困難を描いた超話題作。解説 伊東順子。推薦文 松田青子

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【韓国】
ミン・ジン・リー『パチンコ(Pachinko )』(Head of Zeus)

評者:渡辺 由佳里

しかし、これは日本人を糾弾する小説ではない。1人の人間として「読者」になれば、誰でも感情移入できるし、家族ドラマとして楽しめる本だ。私は、若い頃に観たNHK連続テレビ小説の「おしん」を思い出した。そういう雰囲気もある。(この書評を読む)

Pachinko / Min Jin Lee
Pachinko
  • 著者:Min Jin Lee
  • 出版社:Head of Zeus
  • 装丁:ペーパーバック(560ページ)
  • 発売日:2017-08-03
  • ISBN-10:178669137X
  • ISBN-13:978-1786691378
内容紹介:
* Shortlisted for the National Book Award * * One of the New York Times's 10 Best Books of 2017 * Yeongdo, Korea 1911. In a small fishing village on the banks of the East Sea… もっと読む
* Shortlisted for the National Book Award * * One of the New York Times's 10 Best Books of 2017 * Yeongdo, Korea 1911. In a small fishing village on the banks of the East Sea, a club-footed, cleft-lipped man marries a fifteen-year-old girl. The couple have one child, their beloved daughter Sunja. When Sunja falls pregnant by a married yakuza, the family face ruin. But then Isak, a Christian minister, offers her a chance of salvation: a new life in Japan as his wife. Following a man she barely knows to a hostile country in which she has no friends, no home, and whose language she cannot speak, Sunja's salvation is just the beginning of her story. Through eight decades and four generations, Pachinko is an epic tale of family, identity, love, death and survival.

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【香港】
小川 さやか『チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学』(春秋社)

評者:武田 砂鉄

もつれた状態をほどくのではなく、もつれたまま過ごすチョンキンマンションの社会。全体像が見えない構造の中で無数に生まれる営みが、いい加減なのに、なぜだか力強い。(この書評を読む)

チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学 / 小川 さやか
チョンキンマンションのボスは知っている: アングラ経済の人類学
  • 著者:小川 さやか
  • 出版社:春秋社
  • 装丁:単行本(276ページ)
  • 発売日:2019-07-24
  • ISBN-10:4393333713
  • ISBN-13:978-4393333716
内容紹介:
香港のタンザニア人ビジネスマンの生活は「まさか!」の連続。既存の制度に期待しない人々の、自由で合理的な有様とは。

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【香港】
陳浩基『ディオゲネス変奏曲』(早川書房)

評者:若島 正

そして、日本の読者にとっては、日本の漫画やポップスといった文化だけでなく、この短篇群に日本産の本格ミステリ、さらには新本格ミステリの影響を読み取らずにはいられない。横溝正史に伏線の張り方を学んだという陳浩基は、借りたものの寄せ集めから、華文(中国語)ミステリの奇妙な華を咲かせた。(この書評を読む)

ディオゲネス変奏曲 / 陳 浩基
ディオゲネス変奏曲
  • 著者:陳 浩基
  • 翻訳:稲村 文吾
  • 出版社:早川書房
  • 装丁:新書(362ページ)
  • 発売日:2019-04-03
  • ISBN-10:4150019428
  • ISBN-13:978-4150019426
内容紹介:
今、新たな潮流として注目を浴びている華文(中国語)ミステリ。その第一人者・陳浩基が持てる才能を遺憾なく発揮したのが、この自選短篇集である。大学生たちが講義室にまぎれこんだ謎の人物「X… もっと読む
今、新たな潮流として注目を浴びている華文(中国語)ミステリ。その第一人者・陳浩基が持てる才能を遺憾なく発揮したのが、この自選短篇集である。大学生たちが講義室にまぎれこんだ謎の人物「X」の正体を暴くために推理を競い合う本格ミステリ「見えないX」、台湾推理作家協会賞最終候補作となった衝撃のサスペンス「藍を見つめる藍」、密室殺人を扱った「作家デビュー殺人事件」、時間を売買できる世界を描いた異色作「時は金なり」など、奇想と仕掛けに満ちた驚愕の17篇を収録。著者デビュー10周年記念作品。

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【台湾】
甘耀明『冬将軍が来た夏』(白水社)

評者:張 競

問われるのは現代文明の外側から何が見えるか、責任のある死のためにはどう生きるべきかである。(この書評を読む)

冬将軍が来た夏 / 甘耀明
冬将軍が来た夏
  • 著者:甘耀明
  • 翻訳:白水 紀子
  • 出版社:白水社
  • 装丁:単行本(410ページ)
  • 発売日:2018-06-19
  • ISBN-10:456009635X
  • ISBN-13:978-4560096352
内容紹介:
レイプ事件で深く傷ついた私のもとに、突然現れた終活中の祖母と5人の老女。台中を舞台に繰り広げられる、ひと夏の愛と再生の物語。

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【台湾】
『シャマン・ラポガンの海洋文学』(草風館)

評者:高樹 のぶ子

種類と用途が明確にされているのは魚に限らず、森の樹木も使用目的により種類が決められている。木を切るときは「あなたを殺すが、あなたはタタラ(トビウオ漁用の舟)に生まれ変わる」と語りかけ許しを請う。樹木にも魚にも「人格」があり、人間と対等に扱われる。(この書評を読む)

冷海深情―シャマン・ラポガンの海洋文学〈1〉  / シャマン・ラポガン
冷海深情―シャマン・ラポガンの海洋文学〈1〉
  • 著者:シャマン・ラポガン
  • 翻訳:魚住 悦子
  • 出版社:草風館
  • 装丁:単行本(267ページ)
  • 発売日:2015-01-00
  • ISBN-10:4883231941
  • ISBN-13:978-4883231942
内容紹介:
『冷海深情』-冷たい海、深い情。海洋文学作家シャマン・ラポガンの代表作。

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【フィリピン】
司凍季『椰子の血: フィリピン・ダバオへ渡った日本人移民の栄華と落陽』(原書房)

評者:松原 隆一郎

ダバオには日比の混血児も多いが、それは日本人の土地所有が認められなかったことに起因する。フィリピン人の妻を娶(めと)り、しかし籍を入れずにフィリピン国籍を得た我が子に土地を持たせようとするためだ。多くの悲劇はここに始まる。(この書評を読む)

椰子の血: フィリピン・ダバオへ渡った日本人移民の栄華と落陽 / 司凍季
椰子の血: フィリピン・ダバオへ渡った日本人移民の栄華と落陽
  • 著者:司凍季
  • 出版社:原書房
  • 装丁:単行本(374ページ)
  • 発売日:2013-11-25
  • ISBN-10:4562049685
  • ISBN-13:978-4562049684
内容紹介:
20世紀初頭にフィリピンに渡った日本人移民。国を棄てて新天地を求めた彼らはやがて来た戦争に翻弄され、ついには国からも棄てられる。
流転する運命に絶望するだけなのか……。
祖母の実体験をもとに綿密な取材を経て紡ぎ上げた一族の歴史。

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【フィリピン】
谷口 美代子『平和構築を支援する―ミンダナオ紛争と和平への道―』(名古屋大学出版会)

解説:谷口 美代子

こうした現場経験を通して痛感したのは、ミンダナオ紛争をめぐる問題が「国家 対 反政府勢力」といった単純な対立構造だけでは説明しきれないということだった。ミンダナオにとどまらず、紛争影響地域では、一見矛盾したことが重なり合う事態に頻繁に遭遇する。それゆえに「なぜ、国家からの分離独立を目指す人びと同士が殺し合うのか」「なぜミンダナオでは紛争や暴力が延々と続いているのか」などの疑問が自然と浮かびあがってきたのである。(この書評を読む)

平和構築を支援する―ミンダナオ紛争と和平への道― / 谷口 美代子
平和構築を支援する―ミンダナオ紛争と和平への道―
  • 著者:谷口 美代子
  • 出版社:名古屋大学出版会
  • 装丁:単行本(392ページ)
  • 発売日:2020-04-10
  • ISBN-10:4815809852
  • ISBN-13:978-4815809850
内容紹介:
リベラル平和構築論を超えて――。15万人に及ぶ犠牲者を出し、日本も関わるアジアの代表的地域紛争の和平をいかに実現すべきか。徹底した現地調査により、分離独立紛争とその影に隠れた実態を解明、外部主導の支援の限界を示して、現地社会の視点をふまえた平和構築のあり方を考える。

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【タイ】
プラープダー・ユン『新しい目の旅立ち』(株式会社ゲンロン)

評者:都甲 幸治

この世界のどこかにまだあるはずの真実を探したい。こうしたユンのロマンティックな想いは、彼らの暮らしや笑顔に触れるうちに崩れ去る。そして彼は悟るのだ。今ここにあるもの全て、原田さんも自分も、都市さえも、かけがえのない神秘ではないか。 (この書評を読む)

新しい目の旅立ち / プラープダー・ユン
新しい目の旅立ち
  • 著者:プラープダー・ユン
  • 翻訳:福冨 渉
  • 出版社:株式会社ゲンロン
  • 装丁:単行本(256ページ)
  • 発売日:2020-02-07
  • ISBN-10:490718834X
  • ISBN-13:978-4907188344
内容紹介:
新世代の小説や映画を続々発表、タイ・ポストモダンのカリスマとなったプラープダー・ユン。そんな流行作家も30代半ばを迎え、精神的危機に直面する。バンコクの喧騒を離れ自然と触れる旅に出… もっと読む
新世代の小説や映画を続々発表、タイ・ポストモダンのカリスマとなったプラープダー・ユン。そんな流行作家も30代半ばを迎え、精神的危機に直面する。バンコクの喧騒を離れ自然と触れる旅に出た作家だが、新しい経験と出会うことができず、旅の失敗を危惧する。そんな折、フィリピンの作家たちとの交歓で話題に上った「黒魔術の島・シキホール島」。興味をもった彼は即座に渡航を決意する。魔女や祈祷師との対面、そして島で暮らす人々との交流のなかで再発見したのは、かつて親しんでいたスピノザやソローの哲学だった。「新しい目」で世界と出会う、小説でも哲学でもある思考の旅の軌跡。

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【タイ】
空族(富田克也・相澤虎之助)『バンコクナイツ: 潜行一千里』(河出書房新社)

評者:柳下 毅一郎

『バンコクナイツ』では、監督兼主演の富田克也がタイを発見してゆくさまがくまさにリアルタイムでとらえられている。バンコク地獄めぐりののち、イサーンへたどりついたときの開放感、それはまさに富田が感じていたことのはずである。もちろんすべてがフィクションなのだが、だがそこにはまちがいなく真実がある。ドラマでもドキュメントでもない境地に映画は到達するのだ。(この書評を読む)

バンコクナイツ: 潜行一千里 / 空族(富田克也・相澤虎之助)
バンコクナイツ: 潜行一千里
  • 著者:空族(富田克也・相澤虎之助)
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:単行本(292ページ)
  • 発売日:2017-11-29
  • ISBN-10:4309026311
  • ISBN-13:978-4309026312
内容紹介:
日本人向け歓楽街・タニヤ通りで教えられた音楽に導かれ、男たちはインドシナ奥地でアジアと日本を貫く“闇”に出会うドキュメント。

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【ベトナム】
マルグリット・デュラス『愛人 ラマン』(河出書房新社)

評者:辻原 登

老いたデュラスにある男性が「若いころはおきれいだったと、みなさん言いますが、若いころのお顔よりいまの顔のほうが私は好きです、嵐のとおりすぎたそのお顔のほうが」と言ったそうだ。 (この書評を読む)

愛人 ラマン  / マルグリット・デュラス
愛人 ラマン
  • 著者:マルグリット・デュラス
  • 翻訳:清水 徹
  • 出版社:河出書房新社
  • 装丁:文庫(221ページ)
  • 発売日:1992-02-05
  • ISBN-10:4309460925
  • ISBN-13:978-4309460925
内容紹介:
18歳でわたしは年老いた-。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インド… もっと読む
18歳でわたしは年老いた-。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インドシナを舞台に、15歳のときの、金持の中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。センセーションをまきおこし、フランスで150万部のベストセラー。J・J・アノー監督による映画化。

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【ベトナム】
近藤 紘一『サイゴンから来た妻と娘』(文藝春秋)

評者:木村 尚三郎

ベトナム人は子供を育てるとき動物を飼い慣らすのと同じ態度で臨んでいる。子供というのは本来的には性悪なものだから、力をもって一つの枠組みを与え、強い子につくりあげていく、というのがベトナム式育て方で、どんどん叱り飛ばすし、こき使う。このしつけは学業だけでなくて、身体づくりにもおよんでいます。(この書評を読む)

サイゴンから来た妻と娘 / 近藤 紘一
サイゴンから来た妻と娘
  • 著者:近藤 紘一
  • 出版社:文藝春秋
  • 装丁:文庫(267ページ)
  • 発売日:1981-07-25
  • ISBN-10:4167269015
  • ISBN-13:978-4167269012
内容紹介:
戦火のサイゴンで日本の新聞記者が、大輪の花のような笑顔に惹かれて子連れのベトナム女性と結婚した。親に絶対服従のスパルタ教育にショックを受け、可愛いペットのウサギ料理に度肝を抜かれ…… もっと読む
戦火のサイゴンで日本の新聞記者が、大輪の花のような笑顔に惹かれて子連れのベトナム女性と結婚した。親に絶対服従のスパルタ教育にショックを受け、可愛いペットのウサギ料理に度肝を抜かれ……。毎日のように巻き起こる小事件を通して、アジア人同士のカルチャアギャップを軽妙な筆で描く、第10回大宅賞受賞作品

目次 サイゴンからの子連れ妻
ベトナム式子育て法
わが家の性教育
妻は食いしん坊
夫婦そろって動物好き
いくらしたかね?
ミーユンの思春期
ベトナム難民の涙
ベトナムからの手紙

私は1971年夏から1975年5月まで、サンケイ新聞のサイゴン特派員として勤務した。途中、数ヶ月間任地をあけたことがあったが、日本の新聞社の“戦地特派員"としては異例といえるほどの長期勤務となった。その間、何回か転勤の打診は受けたが、あるときはためらいながら、あるときはためらわずに任期延長を申し出た。(あとがきより)

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【ベトナム】
バオ・ニン『戦争の悲しみ』(めるくまーる)

評者:辻井 喬

作品の主人公は勝利した人民軍の兵士なのだが、彼等の恐怖・友情・逃亡や、麻薬で苦痛を忘れようとする行動や恋愛などにも作家の目が生きていて、青春小説・恋愛小説、私小説としてさえも読める。政府は「人民と国家の利益から逸脱する文学は許されない」と批判し、再版を認めなかったと解説にあった。それを見て私は敗戦前の我が国の言論統制の時代を思い出した。愚かなことだ。(この書評を読む)

戦争の悲しみ / バオ・ニン
戦争の悲しみ
  • 著者:バオ・ニン
  • 翻訳:井川 一久
  • 出版社:めるくまーる
  • 装丁:単行本(370ページ)
  • ISBN-10:4839700923
  • ISBN-13:978-4839700928
内容紹介:
キエンは何度も死地を生きのびた。だが、戦争という苛酷な体験は、彼の心身に癒しがたい傷を残した。凄絶な戦闘、ジャングルをさまよう死者の霊、部下たちの気高い自己犠牲…痛切な思い出の数々… もっと読む
キエンは何度も死地を生きのびた。だが、戦争という苛酷な体験は、彼の心身に癒しがたい傷を残した。凄絶な戦闘、ジャングルをさまよう死者の霊、部下たちの気高い自己犠牲…痛切な思い出の数々が彼につきまとう。戦後のハノイに生還して、キエンは奔放で情熱的な同級生フォンと11年ぶりに再会する。かつて二人は狂おしい愛で結ばれていたのだった。だが今は、芸能会の放恣な生活に身を委ねるフォン。ここにも戦争の深い傷あとがある。極限状況における人間の悲劇性を見てしまった二人に、はたして青春の愛は回復するだろうか?ヴェトナム作家協会賞受賞・英インデペンデント紙海外小説賞受賞。

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【ベトナム】
多和田 葉子『旅をする裸の眼』(講談社)

評者:豊崎 由美

私は自分が思っているような私なのか。私たちは〈みんな誰が監督なのか分からない歴史という映画の中で絶えず何かの役を演じ続けてい〉るだけではないのか。読む者をたじろがせずにはおかない、これは大変な傑作なのである。(この書評を読む)

旅をする裸の眼 / 多和田 葉子
旅をする裸の眼
  • 著者:多和田 葉子
  • 出版社:講談社
  • 装丁:文庫(296ページ)
  • 発売日:2008-01-16
  • ISBN-10:406275942X
  • ISBN-13:978-4062759427
内容紹介:
ベトナムの女子高生の「わたし」は、講演をするために訪れた東ベルリンで知り合った青年に、西ドイツ・ボーフムに連れ去られる。サイゴンに戻ろうと乗り込んだ列車でパリに着いてしまい、スクリーンの中で出会った女優に、「あなた」と話しかけるようになる―。様々な境界の上を皮膚感覚で辿る長編小説。

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【カンボジア】
杉山 隆男『兵士に聞け』(小学館)

評者:猪瀬 直樹

なかでもPKOでカンボジアに派遣された自衛隊員の話がおもしろい。ある兵士は高校時代、小遣いの大半をつぎ込みモデルガンや米軍の制服を買いあさる「軍事おたく」だった。そのころの彼の憧れはフランスの外人部隊である。とりあえず自衛隊に入った。(この書評を読む)

兵士に聞け / 杉山 隆男
兵士に聞け
  • 著者:杉山 隆男
  • 出版社:小学館
  • 装丁:文庫(800ページ)
  • 発売日:2007-07-07
  • ISBN-10:4094081879
  • ISBN-13:978-4094081879
内容紹介:
自衛隊員の生の声に耳を傾けた渾身ルポ25万もの兵力を擁し、核兵器以外のあらゆる兵器を有する巨大組織でありながら、軍隊として存在することは許されない自衛隊。戦う相手も見えない中で「… もっと読む
自衛隊員の生の声に耳を傾けた渾身ルポ

25万もの兵力を擁し、核兵器以外のあらゆる兵器を有する巨大組織でありながら、軍隊として存在することは許されない自衛隊。戦う相手も見えない中で「日蔭者」として生きることを強いられた隊員たちは、日々何を思い過酷な訓練に従事しているのか。様々な基地を訪ね歩き、訓練にも同行し、彼らの生の声に耳を傾けた渾身のルポ。日本を守る存在ながら、日本人があまりにも知らない自衛隊の実情に深く迫る。'96年新潮学芸賞受賞作。

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【インドネシア】
川端 裕人『我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち』(講談社)

評者:村上 陽一郎

現生人類がこの世に出現するのが数十万年前とするなら、ちょうどその頃までは「ヒト」属は、何種類もの共存状態だったのに、現生人類(ホモ・サピエンス)の世代になると、種としては「孤独」になった。そこにはどのような事情があったのか、それを最新の知見を元にしながら、解き明かすのが本書ということになる。(この書評を読む)

我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち / 川端 裕人
我々はなぜ我々だけなのか アジアから消えた多様な「人類」たち
  • 著者:川端 裕人
  • 監修:海部 陽介
  • 出版社:講談社
  • 装丁:新書(288ページ)
  • 発売日:2017-12-14
  • ISBN-10:4065020379
  • ISBN-13:978-4065020371
内容紹介:
地球上に存在した「人類」は我々ホモサピエンスだけではない。彼らはなぜ滅んだのか。我々はなぜ生き残ったのか。人類学の最新成果!

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【バングラデシュ】
辺見 庸『もの食う人びと』(角川書店)

評者:片山 修

「食」という人間にとっての日常生活における原点、すなわち基本的ディテールにこだわりながら、今日的状況における人間存在について鮮やかに描き切っている。(この書評を読む)

もの食う人びと  / 辺見 庸
もの食う人びと
  • 著者:辺見 庸
  • 出版社:角川書店
  • 装丁:文庫(365ページ)
  • 発売日:1997-06-20
  • ISBN-10:4043417012
  • ISBN-13:978-4043417018
内容紹介:
人は今、何をどう食べているのか、どれほど食えないのか…。飽食の国に苛立ち、異境へと旅立った著者は、噛み、しゃぶる音をたぐり、紛争と飢餓線上の風景に入り込み、ダッカの残飯からチェルノ… もっと読む
人は今、何をどう食べているのか、どれほど食えないのか…。飽食の国に苛立ち、異境へと旅立った著者は、噛み、しゃぶる音をたぐり、紛争と飢餓線上の風景に入り込み、ダッカの残飯からチェルノブイリの放射能汚染スープまで、食って、食って、食いまくる。人びととの苛烈な「食」の交わりなしには果たしえなかった、ルポルタージュの豊潤にして劇的な革命。「食」の黙示録。連載時から大反響をよんだ感動の本編に、書き下ろし独白とカラー写真を加えた、新しい名作文庫の誕生。

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【ネパール】
田中 雅子『ネパールの人身売買サバイバーの当事者団体から学ぶ―家族、社会からの排除を越えて』(上智大学出版)

評者:旦 敬介

メンバーのライフストーリーからは、人が売買被害に遭う状況が単純でなく、教育のない人ばかりでもないことがわかってくる。人身売買に限らないさまざまな人権被害者サポートへのヒントがある。(この書評を読む)

ネパールの人身売買サバイバーの当事者団体から学ぶ―家族、社会からの排除を越えて / 田中 雅子
ネパールの人身売買サバイバーの当事者団体から学ぶ―家族、社会からの排除を越えて
  • 著者:田中 雅子
  • 出版社:上智大学出版
  • 装丁:単行本(ソフトカバー)(183ページ)
  • 発売日:2017-05-12
  • ISBN-10:4324102619
  • ISBN-13:978-4324102619
内容紹介:
日本におけるネパールのイメージは、紛争、混乱、貧困、そして2015年の大地震・・・など否定的なものが多いかもしれませんが、市民社会においては当事者団体の存在感が大きく、社会的スティグ… もっと読む
日本におけるネパールのイメージは、紛争、混乱、貧困、そして2015年の大地震・・・など否定的なものが多いかもしれませんが、市民社会においては当事者団体の存在感が大きく、社会的スティグマをもつ人びとによる多様な当事者運動が盛んです。
本書では、2013年度にアジアのノーベル賞といわれるマグサイサイ賞を受賞した、人身売買の被害を克服したサバイバーの当事者団体シャクティ・サムハ(ネパール語で「力強いグループ」の意)を取り上げ、家族や地域社会からの排除など、社会的スティグマに苦しんでいた女性たちが、自身の権利の回復に目覚め、人身売買撲滅運動の担い手として成長する過程を紹介します。
貧困や暴力は遠い国の話ではなく、日本国内にも人身売買(人身取引)や性的搾取の被害者・加害者が多数存在していますが、「問題を放置している国」とされています。
日本社会の問題についても考えるヒントを示唆してくれる1冊です。

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【インド】
ブルーシープ, 板橋区立美術館『世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦』(ブルーシープ)

評者:旦 敬介

南インドの小さな出版社タラブックスは二十二年前から独特な出版活動を展開して、世界的な成功を収めてきた。といっても、たくさん売れたという意味ではない。絵本を中心に、手で漉すいた紙に全ページをシルクスクリーンで手刷りするなど、工芸品のような本を中心にしているので、大量生産はできないのだ。(この書評を読む)

世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦 /
世界を変える美しい本 インド・タラブックスの挑戦
  • 編集:ブルーシープ, 板橋区立美術館
  • 出版社:ブルーシープ
  • 装丁:単行本(176ページ)
  • 発売日:2017-11-10
  • ISBN-10:4908356033
  • ISBN-13:978-4908356032
内容紹介:
世界中の本好きを魅了する、南インド・チェンナイの出版社「タラブックス(Tara Books)」。日本でも『夜の木』(タムラ堂)や『水の生きもの』(河出書房新社)など10冊以上が翻訳出版されフ… もっと読む
世界中の本好きを魅了する、南インド・チェンナイの出版社「タラブックス(Tara Books)」。
日本でも『夜の木』(タムラ堂)や『水の生きもの』(河出書房新社)など10冊以上が翻訳出版されファンを広げ、
今年6月には『タラブックス インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』(玄光社)が出版され、
話題を集めています。本書は2017年11月から板橋区立美術館で開催される『世界を変える美しい本 タラブックスの挑戦』の公式図録です。
タラブックスのトレードマークは、手すきの紙にシルクスクリーンで印刷し手製本で仕上げた「ハンドメイド本」。
そのほかテーマもかたちも様々な、固定概念にとらわれない画期的な本を約120冊刊行しています。
本書はタラブックスが生み出す本の魅力の全貌を伝える初のビジュアルブックです。
代表的な本31冊を撮り下ろし、絵本の原画から画家たちの制作風景、印刷工房の様子やチェンナイの街の風景まで、
多数の写真でタラブックスの本の生まれる土壌を紹介します。
巻末のロングインタビューでは、タラブックスの代表者2人が、成り立ちから本作りの哲学、軽やかに挑戦する心、
そして持続的な企業としての組織論やビジネスに至るまで縦横に語ります。

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【インド】
ジュンパ・ ラヒリ『停電の夜に』(新潮社)

評者:堀江 敏幸

彼女の小説に登場するのは、多くの場合、カルカッタ出身のベンガル人を両親に持ち、ロンドンで生まれて幼少時にアメリカへ渡った彼女自身の来歴に近しい、移民とその周辺の人々である。(この書評を読む)

停電の夜に  / ジュンパ ラヒリ
停電の夜に
  • 著者:ジュンパ ラヒリ
  • 翻訳:小川 高義
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:文庫(327ページ)
  • 発売日:2003-02-28
  • ISBN-10:4102142118
  • ISBN-13:978-4102142110
内容紹介:
毎夜1時間の停電の夜に、ロウソクの灯りのもとで隠し事を打ち明けあう若夫婦-「停電の夜に」。観光で訪れたインドで、なぜか夫への内緒事をタクシー運転手に打ち明ける妻-「病気の通訳」。夫婦、家族など親しい関係の中に存在する亀裂を、みずみずしい感性と端麗な文章で表す9編。ピュリツァー賞など著名な文学賞を総なめにした、インド系新人作家の鮮烈なデビュー短編集。

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【インド】
石井遊佳『百年泥』(新潮社)

評者:鴻巣 友季子

離婚後、男が原因で借金を作り、南インドに「身売り」されてしまった中年女性が主人公だ。チェンナイの最大手IT企業で日本語教師をしているが、他者との意思疎通にいささか問題を抱えている模様。(この書評を読む)

百年泥 第158回芥川賞受賞 / 石井 遊佳
百年泥 第158回芥川賞受賞
  • 著者:石井 遊佳
  • 出版社:新潮社
  • 装丁:単行本(125ページ)
  • 発売日:2018-01-24
  • ISBN-10:4103515317
  • ISBN-13:978-4103515319
内容紹介:
橋の下に逆巻く川の流れの泥から百年の記憶が蘇る! かつて綴られなかった手紙、眺められなかった風景、聴かれなかった歌。話されなかったことば、濡れなかった雨、ふれられなかった唇が、百年泥だ。流れゆくのは――あったかもしれない人生、群れみだれる人びと……

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【インド】
山折 哲雄『愛欲の精神史1 性愛のインド』(角川学芸出版)

評者:張 競

途轍もなくスケールが大きい。インドから説き起こし、ヨーロッパや中国にまで話を広げ、最終的には日本に帰着する。仏教の経典や西洋の思想書を博引苦証しながら、日本の古典から現代の小説にいたるまで縦横無尽に語る。(この書評を読む)

愛欲の精神史1 性愛のインド  / 山折 哲雄
愛欲の精神史1 性愛のインド
  • 著者:山折 哲雄
  • 出版社:角川学芸出版
  • 装丁:文庫(300ページ)
  • 発売日:2010-03-25
  • ISBN-10:4044094187
  • ISBN-13:978-4044094188
内容紹介:
釈迦を生んだインドは、ヒンドゥー教の生命観を反映した強力な性愛とエロスが渦巻く狂躁の世界でもあった。そのインドの宗教世界に禁欲と神秘主義をもって分け入り、自己神化論へといたるウェ… もっと読む
釈迦を生んだインドは、ヒンドゥー教の生命観を反映した強力な性愛とエロスが渦巻く狂躁の世界でもあった。そのインドの宗教世界に禁欲と神秘主義をもって分け入り、自己神化論へといたるウェーバーの思考をたどり、また同じ禁欲という観点から、ガンディーの「非暴力」思想の背後にある「性ののり越え」という奇妙な試み、その聖性と魔性を描く。インドという土壌で展開されるエロスの抑圧と昇華の相克を論じた、探究の書。

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【インド】
サタジット・レイ『ユニコーンを探して―サタジット・レイ小説集』(筑摩書房)

評者:牧 眞司

レイは、日記、手紙、列車の旅、街の変わり者が語る与太話などを、物語の“きっかけ”に用いる。ただし、それは創作上の技巧というより、作者自身の肉声ともいうべきものだ。その心地よさに誘われて、読者は作品世界へと入りこんでいく。アイデアは真似できても、この語り口はなかなか真似できるものではない。(この書評を読む)

ユニコーンを探して―サタジット・レイ小説集 / サタジット・レイ
ユニコーンを探して―サタジット・レイ小説集
  • 著者:サタジット・レイ
  • 翻訳:内山 眞理子
  • 出版社:筑摩書房
  • 装丁:単行本(360ページ)
  • ISBN-10:4480831444
  • ISBN-13:978-4480831446
内容紹介:
チベット探険家・ウィラードの日記が発見された。「私は今日ユニコーンを見た。誓って幻などではない」それを読んで彼らはユニコーンを探しに旅立った…。サタジット・レイの超自然ファンタジー10篇。日本初の紹介。

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